症例&コラム

折れた前歯を即日審美インプラントで1日で治した症例について

折れた前歯を即日審美インプラントで1日で治した症例

主訴
  • 仕事柄人前に出るので早く終わらせてほしい
  • 入れ歯や歯を削るのは嫌
  • かみ合わせと歯茎の位置が難しいから専門の先生でやってもらってと他院で断られた。
通院期間・回数
  • 治療期間は2ヶ月
    通院回数4回
治療内容
  • インプラント治療,即日審美回復
治療のメリット・デメリット
  • メリット:歯がすぐはいる、他の歯を削らない
  • デメリット:費用がかかる

日常のなにげない瞬間に、予想もしないトラブルが起こることがあります。
今回ご紹介するのは、「あずきバーを食べていたら前歯が折れてしまった」という患者さんの症例です。
前歯は顔の印象を大きく左右する部位であり、折れたり欠けたりすると見た目の問題だけでなく、話す・笑う・食べるという日常の行為にも影響します。
患者さんは「人前に立つ仕事をしているので、できるだけ早く元に戻したい」という強い希望を持たれていました。
従来であれば「入れ歯」「ブリッジ」といった選択肢が一般的でしたが、今回は即日インプラント+仮歯装着(即時審美回復)という、より自然でスピーディな治療法を採用しました。
結果として、治療初日に笑顔を取り戻し、2ヶ月で最終補綴完了という短期間での審美的・機能的回復を実現しています。

患者様のお悩み

食事がとりづらいです。一番、食事を楽しめる治療をお願いしたいです。

「 あずきバーを食べてたら前歯が折れました。人前に出る仕事なので、早く治したいです。入れ歯や歯を削るのは嫌です。 」とのお悩みでご来院されました。
医療的要約:上顎右中切歯の歯冠破折。審美的障害および発音への影響を訴え来院。

現病歴

患者さんは40代男性。接客を伴う職業で、人前で話す・笑う機会が多い方でした。
数日前、仕事の合間に食べた「あずきバー」をかじった瞬間、「ガリッ」という感触とともに前歯が折れたとのこと。
折れた歯をティッシュで包んで保存し、近隣の歯科医院を受診。
しかし、「かみ合わせが複雑で、歯ぐきのラインも左右非対称。審美的に整えるには専門医でないと難しい」と説明され、治療を断られました。
その後、紹介を受けて当院に来院されました。
初診時の印象は、かなり落ち込んだ様子で「このままでは笑うのも怖い」とおっしゃっていました。
ただ一方で、「絶対に元の笑顔を取り戻したい」という前向きな姿勢も強く感じられました。

既往歴・服薬・アレルギー

全身的に健康。
既往疾患・服薬・アレルギーなし。
麻酔や外科処置に対する禁忌もなく、安全に治療可能な状態。

歯科既往・メインテナンス履歴・歯科恐怖の有無

これまで定期検診を受ける習慣はあったものの、ここ数年は忙しさから足が遠のいていたそうです。
過去に虫歯治療とホワイトニングの経験あり。歯科治療への恐怖は少なく、むしろ「最新の治療なら任せたい」と信頼を寄せてくださいました。

社会歴

仕事は接客を伴う管理職。
人と話す・笑う機会が多く、前歯の見た目は自信にも直結する部分です。
仕事柄マスクを外す機会も多く、「歯がない状態では出勤できない」と心理的ストレスを強く訴えていました。
また、仕事のスケジュールが過密で「何度も通院できない」ことから、短期間完結型の治療法を希望されていました。

口腔内所見(視診)

上顎右中切歯(#11)が歯根近くで縦破折し、残存歯質は歯肉縁下まで達していました。
歯肉の炎症は軽度、隣在歯は健全で、かみ合わせも安定。
笑ったときに歯肉がやや見える「ガミースマイル気味」のため、歯肉ラインのわずかな不揃いも審美的に目立ちやすい状態でした。

画像所見

CTで骨の高さ・厚みともに良好。頬側骨の吸収は軽度で、追加の骨移植は不要。
鼻腔底との距離も十分にあり、即時埋入が適応。
歯肉厚み(バイオタイプ)は中程度で、軟組織のボリュームも保たれていました。
→ 審美領域における即時埋入・即日仮歯装着の適応条件を満たしていると判断。

初期評価

診断名:上顎右中切歯破折(保存不可能)
治療計画:抜歯即時インプラント埋入
同日仮歯装着(即時審美回復)
軟組織移植は行わず、埋入位置と角度で歯肉ラインを整える
リスク要因としては、咬合力による初期固定の喪失が懸念されたため、即日荷重(仮歯装着)の角度・形態を慎重に設計しました。

説明と同意のプロセス

初診時のカウンセリングでは、3つの治療選択肢を提示しました。
治療法 特徴 デメリット
ブリッジ 固定式・比較的短期間で可能 健康な隣の歯を大きく削る必要がある
部分入れ歯 費用が比較的安価 取り外し式・違和感・金属の見た目
インプラント(即日仮歯装着) 他の歯を削らず、その日に仮歯を入れられる 外科処置・費用が高め

ブリッジ

特徴 固定式・比較的短期間で可能
デメリット 健康な隣の歯を大きく削る必要がある

部分入れ歯

特徴 他の歯を削らず、その日に仮歯を入れられる
デメリット 外科処置・費用が高め

インプラント(即日仮歯装着)

特徴 費用が比較的安価
デメリット 取り外し式・違和感・金属の見た目

患者さんは即断で「インプラントでお願いします」と回答。
「明日も人前に立たなければならない」という状況から、即日仮歯装着による審美回復プランを選択しました。

治療方針の概要

抜歯と同時にインプラント埋入
即日で審美仮歯(プロビジョナルクラウン)を装着
骨移植や歯肉移植は行わず、埋入角度の最適化で歯肉ラインを自然に整える
治療費:55万円(OPC改定料金)
このアプローチにより、外科侵襲を最小限に抑えつつ、コスト・時間・審美性のバランスを最適化しました。

経過(タイムライン形式推奨)

初診日

CT撮影・診査診断・カウンセリング

骨・歯肉ともに良好。即日埋入決定

手術当日

抜歯 → インプラント埋入 → 仮歯装着

麻酔下で約1時間。出血少なく、即日に仮歯装着。手術直後でも自然な見た目に。

2週間後

消毒・仮歯調整

歯肉の治癒良好。咬合・発音に問題なし。

1ヶ月後

二次評価・プロビジョナル形態修正

歯肉ラインが安定。最終補綴準備へ。

2ヶ月後

最終クラウン装着

自然な色調・透明感を再現。治療完了。

治療予後

治療期間:2ヶ月
通院回数:4回
審美・機能ともに良好な結果を得ました。
治療直後に「このまま仕事に出られる」と笑顔でお帰りになった姿が印象的でした。
最終クラウン装着後も自然な歯肉の立ち上がりと透明感が再現され、口元全体が明るく若々しい印象に。
「自信を取り戻せた」との感想をいただきました。

まとめ

前歯部インプラントは、審美性・咬合・軟組織マネジメントのすべてが要求される高難度治療です。
本症例では、移植を行わずインプラントのポジション設計のみで歯肉ラインを整えることができました。
即日荷重(仮歯装着)を成功させる鍵は以下の3点にあります:

初期固定(トルク35Ncm以上)を確保
・咬合負担を回避する仮歯形態
・頬側骨の保持と歯肉圧のバランス

また、心理的観点からも、「その日のうちに見た目が戻る」ことは患者満足度を大きく高める要因となります。
医療技術だけでなく、患者の生活・感情を支える意味でも、このアプローチは非常に有意義です。

倫理・個人情報への配慮

本記事は、患者様の同意を得たうえで匿名化し、個人を特定できる情報は一切含まれていません。

参考

日本口腔インプラント学会「即時荷重インプラントの臨床指針」
Buser D. Esthetic Implant Dentistry: Strategies for Soft and Hard Tissue Management.
Misch CE. Contemporary Implant Dentistry.
Chen ST, Buser D. Clin Oral Implants Res. 2017;28 Suppl 3:1–26.

【監修】歯科医師 渥美憲人

補綴認定医
患者様の口腔内全体を考えた全顎的な治療をご提供しています。